循環型農業とは?環境保全につながる事例やスマート農業との連携について

循環型農業とは?環境保全につながる事例やスマート農業との連携について 循環型農業とは?環境保全につながる事例やスマート農業との連携について

2022.12.27

SDGs(持続可能な開発目標)では、水質汚染の防止や二酸化炭素の排出量の削減などが求められており、その一環として循環型農業が注目されています。将来にわたって農作物を安全かつ安定して供給する持続的な農業経営が求められているなかで、循環型農業とはどのような取り組みなのでしょうか?

循環型農業とは

循環型農業は、従来の化学肥料や農薬などだけに頼るのではなく、一般家庭や畜産業、工業などから出た本来ならば廃棄する物を肥料として活用し、資源を循環させ環境の負荷軽減を目指す農業のシステムのこと。そうすることで、人間をはじめとした生態系の範囲内で農業を回していくため、環境負荷の小さい農業の実現につながると期待されています。
農林水産省では環境保全型農業として位置付けられており、以下のように定義されています。
「農業の持つ物質循環機能を生かし、生産性との調和などに留意しつつ、土づくり等を通じて化学肥料、農薬の使用等による環境負荷の軽減に配慮した持続的な農業(平成4年4月農林水産省環境保全型農業推進本部「環境保全型農業の基本的考え方」による)」

循環型農業のメリット・デメリットについて

循環型農業のメリット

農薬や除草剤の使用量が抑えられる

牛や豚、鶏などの糞尿を発酵させ堆肥化した有機物の投入により、農薬の使用量が抑えられます。また、それらの家畜や合鴨などに雑草を食べさせることで除草剤の使用量も抑えることができ、土壌が豊かになる効果も期待されます。

エコファーマー認定制度で無利息融資や補助金の支援対象に

エコファーマーの認定計画に沿って持続性の高い農業生産方式を導入するための融資を、日本政策金融公庫から無利息で受けられます。融資限度額は個人の農家が5000万円、法人だと1億5000万円です。認定計画に沿った内容であれば、融資を受けた資金を設備投資や品種転換など幅広い用途に活用できます。

また、「エコファーマーマーク」の表示も許諾されるため、環境保全型農業に取り組む農家だというブランディングにも効果を発揮したり、自治体によってはエコファーマーの認定者が申請できる補助金制度を利用できる場合もあります。

循環型農業のデメリット

設備の導入のための初期費用が高額

後述しますが、アクアポニックスと呼ばれる形態だと数百万円~数千万円の初期費用がかかると言われています。
参考:https://twitter.com/aquaponic_s/status/1079905249991610368?s=20&t=EBUcmhbqgLiqI-1KYxz29Q

専門知識を持った人材育成が必要

例えばアクアポニックスでは、水産知識と農業知識が求められるため、事業を回せるだけの専門知識をもった人材育成が必須となります。その他の農法でも、農業知識に限らない幅広い知識が求められる場合があります。

栽培のためには手間がかかる

特別な農法を採用していることに対して適切な価格が設定できればよいですが、市場を形成できないと手間やコストがそのままマイナスとなってしまうリスクがあります。

収量が安定しない可能性がある

循環型農業は、長雨や低温などの天候による影響を受けやすく、慣行農業と比較すると収量や品質が不安定になる可能性があります。事業性を保って農業を続けることが一つの課題となります。

現在の日本の循環型農業・環境保全型農業の現状

日本では、1992年に環境保全型農業の考え方が導入されました。それ以来農薬や肥料の適正使用、家畜排泄物などの有効利用などを増進する施策が行われています。

ただ、1992年以降化学肥料の需要量や化学農薬の出荷量は低減しましたが、使用量は依然として多く、取り組みが認知され広がったとは言え、循環型農業に移管した訳ではない事が伺えます。そのうえ循環型農業は労力がかかり、収量や品質の不安定さ、コストがかかるという面から、販売価格に満足していない農家さんも少なくないのです。

消費者の「環境保全」への関心の低さも挙げられます。平成28年農林水産省が発表した「環境保全型農業の推進について」によれば、「環境に配慮した農産物」の購入理由に「安全」という回答が最も多く、「環境保全に貢献したい」という回答は1割にも満たなかったとあります。
参考:https://www.kaku-ichi.co.jp/media/tips/environmental-protection
参考:https://www.maff.go.jp/j/finding/mind/pdf/yuuki_27.pdf

循環型農業の今後

農業が環境へ与えるリスクとしては、化学肥料や農薬の施用過多、加温施設での化石燃料の多用、プラスチック資材の不適切な処理による有害物質の発生、家畜の糞尿による水質汚濁や悪臭、過度な除草や耕うん過多による土壌粒子の流亡による水質汚濁など様々なものが挙げられます。

これらに対し、循環型農業では、畜糞を肥料として再利用したり、牧草を育てることで土壌を豊かにしつつ、家畜の飼料に変換したりと、資源を循環させることで環境負荷を低減させる効果が期待されています。

循環型農業の事例

アイガモ農法

田植えが終わった田んぼに合鴨を放つことで、除草、防虫効果や、糞尿による肥料効果が得られます。また、最終的に合鴨は人間の食料にもなります。

畜糞堆肥を畑に施用→育った牧草や穀物を飼料として利用(耕畜連携)

この農法では、牛や豚、鶏などの糞尿を発酵させ堆肥化し、それを畑へ還元します。その畑で育った牧草や穀物などを飼料として再度家畜へ供給という循環方法で、最もポピュラーな手法のひとつです。

地域のブランド化のツールとしても用いられることがあります。

アクアポニックス

アクアポニックスとは、水産養殖の「Aquaculture」と、水耕栽培の「Hydroponics」からなる造語で、水耕栽培と養殖を掛け合わせた、次世代の循環型農業です。養殖している魚の排泄物を微生物が植物の栄養素に分解し、植物がそれを吸収することで、浄化された水が再び魚の水槽へと戻る、生産性と環境配慮の両立ができる生産システムです。自然界の縮図とも言えるこのシステムは、水をいっさい捨てない、換えない、そして農薬と化学肥料も必要としない、いわば水で行う有機栽培であり、サステナブルを体言する地球に最も優しい究極のエコ農業とも言われています。

アメリカではアクアポニックスで採れた生産物に対して、USDA(オーガニック認証)の取得が認められています。

スマート農業と循環型農業の関係

スマート農業と循環型農業・環境保全型農業の掛け合わせの事例もいくつか存在しています。

AI自動灌水堆肥

センサーの設置により最適化された灌水と施肥を行うことができます。無駄な肥料を減らすことができ、環境への負荷を減らすことができます。

ビニールハウスの温度の適正化

農家さんのビニールハウスに関するノウハウをAIが学習することで、自動でビニールハウス内の温度を最適化する仕組みが開発されています。収量の増加により肥料の削減が期待できます。
参考:https://smartagri-jp.com/news/3913

ピンポイント農薬・肥料散布

ドローンを用いて農薬散布量を減らす仕組みも存在します。この技術では、まずドローンが圃場の上を飛行して撮影を行います。撮影された画像と、病害虫が発生している画像をAIを用いて比較判定を行い、発生地点にて農薬散布機能を駆動します。これにより、病害虫が発生している地点のみピンポイントで農薬を散布することができます。

深谷市はスマート農業・アグリテックの社会実装に取り組んでいます

スマート農業・アグリテック企業の集積地を目指す深谷市が実施するDEEP VALLEY では、スマート農業技術の実証実験のためのさまざまな機会を提供しております。
例えば、「深谷市アグリテック導入支援事業補助金」を用意し、導入コストの負担を軽減することで、企業様の販促活動ならびに農家の方々のサービス導入を促進。市内におけるスマート農業・アグリテックサービスの浸透しやすい環境を整えております。
(「深谷市アグリテック導入支援事業補助金」については、こちら

  • 新製品開発のために実証実験をしたいが農地がない
  • 実証実験にどんな農地が適しているかわからない
  • 実証実験だけでなく現場の声を聞いて農家さんとコミュニティを広げたい

といったお悩みを抱えている企業のみなさまにお力添えできますので、ぜひご相談ください。

事例O2

深谷市と株式会社AGRI SMILEが
連携協定を締結し、
バイオスティミュラントの
開発・検証に向けた一歩を踏み出す

株式会社AGRI SMILE
株式会社AGRI SMILE
代表取締役

中道 貴也さん

「テクノロジーによって、産地とともに農業の未来をつくる」をパーパスに、JAとともに産地のDXやGXを推進する。
バイオスティミュラント 活用による 脱炭素地域づくり協議会を主導。

事例O2

深谷市と株式会社AGRI SMILEが
連携協定を締結し、
バイオスティミュラントの
開発・検証に向けた一歩を踏み出す

深谷市での取組に向けて
全国でも屈指のアグリテック集積に取り組む深谷市と連携協定を締結の上、バイオスティミュラントを活用した減肥栽培による環境に優しい農産物の生産や、ねぎ残渣を活用したバイオスティミュラントの開発・検証による、新たなブランド作りや脱炭素地域の推進に取り組んでいきたいと思います。
▶AGRISMILE公式HP
▶バイオスティミュラント活用による脱炭素地域づくり協議会
深谷市との主な連携内容
1.バイオスティミュラントを活用した深谷ねぎの減肥栽培
2.深谷ねぎの残渣を活用したバイオスティミュラントの開発と検証
3.深谷ねぎのブランディング活動