ファイナリスト一同が深谷に集結、小島市長がアグリテックの展望を語る
「DEEP VALLEY Agritech Award(ディープバレー・アグリテックアワード)」は、埼玉県深谷市が、市内の農家が抱える課題を解決する優れた技術(アグリテック)を表彰する取り組みで、今年度で第5回目を迎えました。今年度は従来の「農業現場での技術」を対象とした募集部門に加え、「農と食」をフードバリューチェーン全体で捉えた募集部門を新設し、「農と食」全体での課題解決を目指すアワードへ刷新。「農業生産部門」と「フードバリューチェーン部門」を設け、生産現場から消費者へつなぐ過程を対象としてアイデアや技術を募集しました。11月に最終審査が行われ、2023年度の最優秀賞が決定し、今回はその表彰式が開催されました。
表彰式の会場にはファイナリストに加え、協賛企業、審査員、DEEP VALLEY推進パートナー(ふかや農業協同組合・埼玉工業大学)、深谷市議会議員や地元の農家の方など、多くの方にご来場いただきました。式の開会にあたって深谷市の小島市長は、「時代の流れとしても、環境への配慮という側面を農業から考えていく提案が増えた。過去のアワードでご提案いただいたものが実際に現場で使われるなど、着実に現場に定着しつつある。これからも深谷の農業、日本の農業を考える場所にしていきたい」と挨拶をしました。
続く協賛企業の挨拶では、株式会社シタラ興産 代表取締役の設楽竜也さんが、「新しいシステムで農家さんを応援するという姿勢を強く感じ、仕事のフレームワークとして勉強になるとともに応援したい気持ちが強い」と述べ、アワードへの協賛に至る思いを述べました。
壇上では「農業生産部門」「フードバリューチェーン部門」の各部門のファイナリスト6社を紹介。表彰式に参加した代表者に対して小島市長より記念品のプレートが手渡され、来場者らが拍手で称えました。
各賞の発表!最優秀賞2社が抱負を語る
まずは協賛企業賞としてシタラ興産賞の発表です。シタラ興産賞は、「“ほったらかすだけ”で草刈りを完了できることを目指す、ネギ畑畝間除草自動ロボット開発」の株式会社FieldWorksが受賞。代表取締役の山岸 開さんが「自分たちが作るロボットを全国の農家に使っていただき役立ってほしいと思っています。深谷の農業現場で実証実験など活動していきたい」と抱負を述べました。 株式会社FieldWorksにはシタラ興産より賞金20万円と盾が授与されました。
そして各部門の最優秀賞の発表です。「農業生産部門」は株式会社TOWING、「フードバリューチェーン部門」はGreen Carbon株式会社が受賞し、両社の代表に小島市長より深谷市からの出資交渉権とトロフィー、副賞の深谷ねぎ10kgが授与されました。
「農業生産部門」の最優秀賞、株式会社TOWINGは「脱炭素・有機転換・減化学肥料を両立する高機能バイオ炭“宙炭(そらたん)”の普及」と題し、高機能バイオ炭の活用により、みどりの食料システム戦略における脱炭素・減化学肥料・減化学農薬の達成を目指すことを提案。取締役 COOの木村 俊介さんは壇上で「有機性廃棄物のバイオマス課題と有機農業への転換や脱炭素という密接に関わる課題について、高機能バイオ炭“宙炭(そらたん)”で改善と進展の後押しをしたいと思います。有機肥料をねぎで実証していく中で、農家さんにとって環境貢献だけではなく、収量性の向上も含めた事業を作っていきたい」と述べました。
「フードバリューチェーン部門」の最優秀賞、Green Carbon株式会社は「深谷ねぎに次ぐブランディング作物、Agreenを活用した環境配慮米(深谷米)の商品開発と深谷ブランドの確立」と題し、カーボンクレジットを通じた、深谷市内の農家への収益還元と深谷米(環境配慮米)のブランディング化および深谷市自体の脱炭素化を提案。事業開発本部 部長の井家 良輔さんは「カーボンクレジット創出・販売を通じた脱炭素・気候変動への取組として、環境配慮米という提案で支援したいと思います。学校給食で提供するなど地域との連携を深め、深谷市と様々な実証実験をしていきたい」と述べました。
2022年度の最優秀企業が進捗報告発表、深谷市で実証実験が進展
各賞が授与された後には、2022年度の「現場導入部門」最優秀賞を受賞した、株式会社TOMUSHI 石田 陽佑さんが、現在の事業状況を発表しました。
「私たちは地域の農家さんや企業から出てくる「ごみ」をカブトムシによって分解し、廃棄物として処理する事業を展開しています。育ったカブトムシは飼育用途やたんぱく質原料、医薬品への活用を進めており、多様な事業展開を目指しています。今年から廃棄物処理の過程で育ったカブトムシを活用したSDGs教育のイベントを全国各地で実施し、深谷市でも開催しました。ふかや緑の王国で開催し、集客施策としても効果があることが分かったため、今後はふかや緑の王国でカブトムシを生産して観光資源とするなど、深谷市と共に地球にやさしい未来の実現をしたいと思います」と今年の成果と今後の抱負を述べました。
閉会の挨拶として、小島市長からは「まだ遠い存在だと思っていた環境への配慮というものが農業現場でもすぐそこに来ているのだと感じた。今回ファイナリストに選ばれた皆さんは様々な場所で注目を浴びていると思う。ぜひ深谷を使っていただき、深谷発の技術にして欲しい。今回のご提案をバックアップし、深谷からこんな技術が出てきた!ということを全国に知らしめるのが私の夢です」と受賞者にエールと熱い思いが送られました。
多様なアグリテック企業が表彰式会場に集結!展示会も実施
表彰式当日、会場外の市役所ロビーにて過去アワード参加企業や登壇したファイナリストらによる合同展示も行われました。
参加企業
【DEEP VALLEY Agritech Award 2022】
・株式会社TOMUSHI(現場導入部門 最優秀賞・FUNDINNO賞)
【DEEP VALLEY Agritech Award 2023】
・株式会社TOWING(農業生産部門 最優秀賞)
・GreenCarbon株式会社(フードバリューチェーン部門 最優秀賞)
・株式会社FieldWorks(シタラ興産賞)
・株式会社オーケープランニング(ファイナリスト)
・EXest株式会社(ファイナリスト)
・株式会社セブン-イレブン・ジャパン(ファイナリスト)
昨年の表彰式から1年が経ち、最優秀企業によるイベントなど深谷市での取り組みが現実的になっている中、他受賞者の技術導入へ向けた取り組みも加速しています。
今年深谷市は農業生産者やアグリテック企業、学生など農業現場の課題解決を目指す全ての人が集まれる場所「アグリテック交流施設」を作りました。宿場町深谷として、旧中山道沿いに立地する「アグリテック交流施設」。そこには生産者と企業、あるいは企業同士のマッチングを促進するため、専門のコーディネーターが常駐しています。人々が集い、多くの方と交流することで農業課題と技術のマッチングを図るなど、人と人をつなぐ取組を今後も進めて参ります。
アグリテック交流施設 アグリ:code22深谷
埼玉県深谷市本住町3-3
TEL: 080-3439-3591