1.はじめに
世界中で約8億人の人々が飢餓の恐怖と向き合っています。この現状はSDGs(持続可能な開発目標)の目標2、「飢餓をゼロに」を達成するための課題を浮き彫りにしています。飢餓問題は人類の究極の課題であり、私たち一人ひとりに問いかけられています。この記事では、飢餓問題の具体的な現状とその原因、そして私たち個人ができることについて詳しく解説します。情報を知ることから、一歩ずつ食糧問題への理解を深め、具体的な行動につなげていきましょう。
2.SDGs目標2「飢餓をゼロに」とは何か
(1) SDGs目標2の具体的な内容と意義
SDGs目標2、「飢餓をゼロに」は、全ての人々、特に貧困層と脆弱な立場にある人々が、一年を通して安全で栄養豊かな食物を得られるようにすることを目指しています。具体的なターゲットは以下の通りです。
- 2030年までに、飢餓とすべての形態の栄養不良を終わらせる
- 2030年までに、全ての人々が一年中、安全で栄養価の高い食糧を十分に確保できるようにする
- 2030年までに、農業生産性と収入を持続可能な方法で倍増させる。
この目指す内容は、食糧問題は個々の国や地域の問題だけでなく、全世界が連携して解決すべき課題であるという意義を示しています。
(2) 飢餓問題の現状:世界的視点と日本的視点
飢餓問題は、全世界で約8億人が影響を受けています。特に、アフリカやアジアの途上国では子どもたちの栄養不良や死亡が深刻な状況にあります。アフリカについては約2億5千万人、アジアについては5億人以上に影響するという試算もあります。
一方、日本では飢餓問題が直接的な問題としては表面化していませんが、食糧自給率の低さが問題視されています。加えて、コロナ禍による生活困窮者の増加や食品ロス等も深刻です。これらが将来的な食糧問題を引き起こす可能性があります。
3.食糧不足・飢餓問題の原因と影響
(1) 主な原因:貧困、自然災害、紛争、食品ロス等
食糧不足や飢餓問題の原因は多岐にわたります。その中で主な要因として挙げられるのが、貧困、自然災害、紛争、そして食品ロスです。
- 貧困:貧困状態にある人々は種まきや収穫など、自給自足のための必要なリソースを手に入れることが困難です。また、都市部の低所得者は健康的な食事を続けるための資金を捻出することも難しい状況にあります。
- 自然災害:干ばつや洪水などの自然災害は農地を直撃し、作物の生産量を大幅に低下させてしまいます。これにより食糧供給が不安定になり、高騰する食糧価格によって一部の人々が食べ物を手に入れることができなくなります。
- 紛争:紛争は農地の荒廃を引き起こし、食糧生産に重大な打撃を与えます。また、戦闘による人々の移動が起こると、安全な食糧供給を確保することが難しくなります。
- 食品ロス:食品の生産から消費までの過程で発生する食品ロスは、食糧供給全体の約1/3を占めます。これは食糧生産に対する大きな無駄となり、飢餓解消に向けた取り組みを阻害します。
以上の各要因は相互に関連し影響しあっています。これらを理解することが、飢餓問題を解決するための第一歩となります。
(2) 飢餓が人・社会に及ぼす影響:栄養不良、肥満、妊産婦・乳児のリスク増大等
飢餓問題は、個々の人々だけでなく社会全体に深刻な影響を及ぼします。まず、飢餓状態にある人々は、食糧の摂取不足から栄養不良に陥り、体力の低下や免疫力の減弱を招きます。また、栄養失調は学習能力を低下させ、子どもたちの未来を奪う可能性もあります。
また、飢餓問題と肥満問題は裏腹に見えますが、実は両方とも「適切な栄養が摂取できていない」ことが根底にあると捉えられます。これは「隠れ栄養失調」とも呼ばれ、偏った食事からくる病気や肥満の原因となります。
特に、妊産婦や乳幼児にとっては飢餓状態は致命的です。母親が十分な栄養を摂取できなければ、胎児や授乳中の子どもへ必要な栄養が行き渡らず、その成長や発育に影響を及ぼす恐れがあります。周囲の支援や社会的なシステムが不可欠となります。
4.各国・NGOなどの取り組み事例
(1) 国際NGOプラン・インターナショナル、ワールド・ビジョンなどの取り組み事例
国際NGOのプラン・インターナショナルは、途上国における食糧不足問題に取り組んでいます。彼らのプロジェクト「フード・フォー・フューチャー」では、持続可能な農業技術の普及や農業トレーニングの提供を行い、地域社会の自立を支援しています。
一方、ワールド・ビジョンは飢餓問題改善を目指し、子供たちに食事を提供する「世界的な飢餓救済キャンペーン」を展開しています。具体的には、給食プログラムを通じて栄養豊富な食事を提供し、健康で教育を受けられる環境を創出しています。
これらの活動は、私たち個々人が飢餓問題を解消するために参加できるプロジェクトの一例です。
主なNGOとその取り組み
名称 | 取り組み |
---|---|
プラン・インターナショナル | 「フード・フォー・フューチャー」プロジェクトで、農業トレーニングの提供や持続可能な農業技術の普及を行う |
ワールド・ビジョン | 「世界的な飢餓救済キャンペーン」を展開し、子供たちに栄養豊富な食事を提供する |
(2) 日本の取り組み事例
日本も飢餓問題の解決に向けて、様々な取り組みを行っています。
例えば、政府は途上国への食糧支援を行っており、JICAを通じて農業技術の指導や肥料の提供などを積極的に行っています。これにより食糧自給率の向上を目指しています。
また、民間企業もSDGsの一部として飢餓問題に取り組んでいます。食品メーカーやスーパーマーケットなどは、食品ロスの削減に力を入れており、未使用の食品を食品銀行に寄付するなどの活動を展開しています。
さらに、市民レベルでも飢餓問題に対する認識が高まり、フードドライブやチャリティーイベントなど、地域での取り組みも盛んに行われています。
5.私たち個人ができること
(1) 世界の現状を知る
世界の飢餓問題は深刻であり、その現状を正しく理解することが第一歩です。
FAO(国連食糧農業機関)の報告によると、2020年の世界の飢餓人口は約9億1千万人と推定され、自然災害や紛争、気候変動によりこの数値は増加傾向にあります。
2020年の飢餓人口分布(FAO)
地域 | 飢餓人口(千人) |
---|---|
アジア | 418,000 |
アフリカ | 323,000 |
ラテンアメリカ・カリブ海 | 47,700 |
全世界 | 911,000 |
このような深刻な現状を理解し、情報収集することから始めることで、具体的な行動を起こすきっかけにつながるでしょう。自身の生活スタイルや行動が全世界の飢餓問題にどのように影響を与えるかを理解することが大切です。
(2) 支援団体・組織への寄付
「飢餓問題の解決に対する支援」という行動の一つに、様々な国際NGOへの寄付があります。これらの団体は、飢餓の抑制や食糧安定供給のためのプログラムを展開し、現地の人々を直接支援しています。
例えば、「セーブ・ザ・チルドレン」では、子どもたちへの栄養補給や保健活動を行っています。「ワールド・ビジョン」では、自給自足のための農業技術指導を提供し、持続可能な食糧供給を目指しています。
寄付は、金銭的な支援だけでなく、物資や技術知識の提供形式もあります。また、定期的な支援や一時的な支援が可能で、自身のライフスタイルや経済状況に合わせて選べます。これらの寄付は、食糧問題の解決に大きな貢献をしています。
(3) ボランティアへの参加
飢餓問題や食糧不足に直接的に取り組める方法の一つが、ボランティアへの参加です。これは、私たち一人一人が自身の時間と技術を活用して、具体的な行動に結びつけることができます。
具体的には、食糧や物資の配布活動や、スキルを活用した教育活動などがあります。また、国内外で行われている農業体験の場に参加し、食糧生産の現場を理解することも重要です。
ボランティアの種類 | 具体的な活動内容 |
---|---|
食糧配布 | 食糧支援団体と連携し、貧困地域への食糧配布 |
教育活動 | 自身のスキルを活用し、現地の人々への教育活動 |
農業体験 | 食糧生産の現場を理解し、農村部の支援 |
ボランティアへの参加は、現地の人々と直接関わることで、飢餓問題に対する理解を深めるきっかけにもなります。
(4) 情報の発信・拡散
情報の発信・拡散は、飢餓問題解決に向けた重要なステップです。個々の声が集まることで社会全体の意識が高まり、具体的な行動につながります。
まずSNSやブログなどを活用して、飢餓問題や関連するトピックについて自分の思いを発信しましょう。記事をシェアしたり、リツイートするだけでも大いに助けになります。
次に、具体的に何を伝えるべきか考えます。以下は情報発信の例です。
- 飢餓問題の現状
- 食糧不足の原因と解決策
- 自分が行っている取り組み
- 支援団体・組織への寄付情報
このように、飢餓問題についての情報を発信することで、私たちは多くの人々に影響を与え、問題解決に一石を投じることができます。
(5) 食品ロスの削減
私たち個々人が飢餓問題解決にできることの一つとして、身近なところでの食品ロスの削減があります。日本だけでなく、全世界で大量の食べ物が捨てられています。
買いすぎや賞味期限の判断ミスから生じる家庭内ロス、スーパーなどでの廃棄物、レストランの残飯などが主な原因です。以下に示すのは食品ロスを削減するための簡単な3つのステップです。
- 「計画的な買い物」: 買い物リストを作り、必要な分だけを買う。
- 「適切な保存」: 食べ物を適切に保存し、食べられる期間を延ばす。
- 「レストランでの適量オーダー」: 過剰な注文を避け、残さないよう心掛ける。
これらの行動一つ一つが、食糧不足の解消に繋がります。飢餓問題は遠く離れた問題ではなく、私たちの日々の生活と深く関わっています。
6.まとめ
飢餓問題解決への個々の役割 飢餓問題の解決は、あくまで全ての人々の共通課題です。自身の生活スタイルを再考し、食品ロスを減らすこと、情報を発信することは私たち一人一人が簡単にできる行動です。
SDGs目標2達成に向けた一歩としての行動呼びかけ SDGs目標2「飢餓をゼロに」は、まだ達成の道半ばです。目標達成は遠い未来の話ではなく、今すぐ私たちができることから始まります。社会全体で取り組むべき課題に対して、一人一人が今すぐできる小さな行動を始めてみませんか?