植物の熱中症、高温障害とは?原因とその影響を受けやすい野菜や稲作について詳しく解説

植物の熱中症、高温障害とは?原因とその影響を受けやすい野菜や稲作について詳しく解説 植物の熱中症、高温障害とは?原因とその影響を受けやすい野菜や稲作について詳しく解説

2024.02.8

気候変動が進む現代、農業はその最前線に立たされています。特に最近の高温は作物に大きなダメージをもたらし、農業経営者や技術者たちを悩ませています。この記事では、高温障害の原因から影響、そして具体的な対策まで紹介し、農業の持続可能な未来を考えます。

1. はじめに:高温障害と農作物

高温障害の基本的な定義

高温障害とは、主に夏期に見られる、気温が一定の高温を超えることにより、農作物が正常に生育できない状態を指します。具体的な発生条件は作物によって異なりますが、一般的には連日35℃以上の気温が続くと発生しやすいとされています。

この状態が続くと、作物は光合成の能力が低下し、栄養供給が滞るなど、重大な生育障害を引き起こします。特に、稲やトマト、キュウリなどの農作物は高温障害に非常に敏感で、大きな影響を受けます。それぞれの作物が高温障害を発症する具体的な温度は以下の表に示します。

作物 高温障害を発症する温度
トマト 32℃以上
キュウリ 35℃以上
35℃以上

次節では、高温障害が発生する科学的なメカニズムについて詳しく解説します。

高温障害が農作物に及ぼす影響

高温障害は、野菜や稲などの農作物に重大な影響を及ぼします。特に、生育期間中の植物が高温にさらされると、光合成能力が低下し、成長が停滞する可能性があります。 例えば、以下のような具体的な影響があります。

【表1】
農作物 高温障害による影響
野菜(キュウリ、トマト) 花落ち、果実の変形、色づき不良
稲(米) 花粉の発生低下、稔性低下、収量減少

また、高温障害は病害虫の発生を助長する可能性もあります。これらの影響は、農作物の品質や収量を大きく低下させ、結果的に農家の収益にも直接的な打撃を与えます。

2. 高温障害の発生原因とメカニズム

高温障害の発生原因は、主に農作物が適応できる温度範囲を超えた高温によるものです。植物は、ある一定の温度が続くと生育が停止し、それが長時間続くと細胞がダメージを受けます。特に、光合成や水分輸送などの生命維持に必要な機能が停止し、最終的には死に至る可能性もあります。

また、高温が続くと、水分蒸散が激しくなり乾燥ストレスを引き起こすこともあります。これは根から吸い上げる水分が葉からの蒸散量を追いつかず、植物全体の水分バランスが崩れる状態を指します。

以下に、これらのメカニズムを表にまとめました。

高温障害の原因 メカニズム
適応できる温度範囲を超えた高温 生育停止→細胞ダメージ→光合成機能停止→死
高温による水分蒸散の増加 乾燥ストレス→水分バランス崩壊

以上のように、高温障害は多角的な要素が絡み合って発生します。次章では、特に高温障害に弱い野菜や稲作について深く解説します。

3. 高温障害が発生しやすい農作物

キュウリやトマトなどの高温障害の症状と影響

キュウリは、特に花や若果において高温障害が発生し易く、30℃を超えると受粉が困難になることで収穫量が大幅に減少します。主な症状としては、花が咲かずに落ちる「落花」、若果が大きくならずに枯れる「若果枯れ」が挙げられます。

一方、トマトは35℃以上の高温になると花粉が固まり、受粉が阻害されます。また、高温により果実の色づきが悪くなる「色づき不良」や、果肉が硬化し味が落ちる「硬組織化」が起きます。

以下の表にキュウリとトマトの高温障害の主要な症状をまとめました。

野菜 高温障害の症状
キュウリ 落花、若果枯れ
トマト 色づき不良、硬組織化

稲(米)の高温障害の症状と影響

稲作における高温障害は、主に「出穂前」「出穂時」「結実期」の3つの時期に発生します。これらはいずれも稲の生育にとって重要なフェーズであるため、注意が必要です。

まず、「出穂前」の高温障害は、早すぎる伸長成長を引き起こし、茎が弱くなるため倒伏しやすくなります。以下の表にその症状をまとめました。

時期 症状
出穂前 茎の早すぎる伸長成長、倒伏

次に、「出穂時」の高温障害では、開花不全や着粒不良が見られ、結果的に収量減少の原因となります。

時期 症状
出穂時 開花不全、着粒不良

最後に、「結実期」の高温障害です。この時期に高温が続くと、稲の充実度が下がり、収量や品質に影響を及ぼします。

時期 症状
結実期 稲の充実度低下

これらの高温障害は、稲作の収量や品質に大きな影響を及ぼします。そのため、異常気象の下での栽培管理が重要となってきます。

4. 高温障害への対策方法

高温障害への対策は大きく分けて三つあります。

まず一つ目は、耐熱性のある品種を選定することです。具体的には、高温に強い品種の野菜や稲を選び、栽培することが考えられます。これは、予防的な対策と言えます。

次に、環境管理です。適切な換気や遮光、冷却などを行うことで、植物が直接的な熱ストレスを受けるのを避けることができます。具体的な方法としては、ハウス栽培では換気扇の設置や遮光ネットの使用、水冷却システムの利用などがあります。

最後に、肥料や栽培方法の工夫も有効な対策の一つです。環境ストレスを軽減する肥料を使用したり、栽培条件を調整することで、植物の耐熱性を向上させることが可能です。

これらの対策を組み合わせて行うことで、高温障害のリスクを下げることができます。

5. 高温障害対策の具体例:トマトのケーススタディ

高温障害を防ぐためのトマト栽培では、いくつかの具体的な対策があります。

  1. 遮光ネットの利用:このネットは、強い日射を防ぎ、同時に温度上昇を抑制します。遮光率は30%程度が目安とされています。
  2. 散水による冷却:適度な散水は高温を下げる効果があります。ただし、湿度を過剰に上げると病気を引き起こす可能性があるため、適量が重要です。
  3. 換気:ハウス栽培の場合、換気口を開けることで高温を排出し、内部の温度を下げることが可能です。
  4. 品種選択:高温に強い品種を選択することも有効な対策の一つです。

上記の対策は、組み合わせて用いることで、より高い効果が期待できます。しかし、具体的な方法は栽培環境や天候により異なるため、柔軟に対応することが求められます。

6. 異常気象と農業:高温障害の予防と対策

近年、気候変動が進み異常気象が頻発しています。この結果、夏季の長期的な高温や急激な温度変化が農作物に大きな影響を及ぼし、高温障害の発生が増えています。

具体的な対策としては、日射量を調節するための遮光ネットの使用や適切な水管理が挙げられます。また、作物に応じた品種選択や播種時期の調整も有効です。

対策方法 詳細
遮光ネットの使用 直射日光を遮り、温度上昇を抑制
水管理 適切な水分供給で作物の生育環境を改善
品種選択 高温に強い品種を選ぶ
播種時期の調整 高温期を避けるため、播種時期を調整

しかし、これらの対策も万能ではありません。異常気象の予測とそれに対応した対策の準備が求められています。高温障害への理解と対策の意識を高め、持続可能な農業を実現することが重要です。

7. まとめ:高温障害とは、その影響と対策

高温障害は、気温の急上昇によって農作物が生育不良を起こす現象です。特に、トマトやキュウリなどの野菜や、稲などの穀物が影響を受けやすいとされています。高温障害が発生すると、収穫量の減少や品質の低下が見られます。

対策としては、適切な温度管理や水分供給、また日陰ネットの設置などが挙げられます。特に異常気象が予想される場合には、これらの対策を早めに実行することが求められます。

このように、高温障害は農業における大きな問題ですが、適切な対策と理解によって被害は最小限に抑えられます。気候変動の影響が強まる中、農作物の生育環境を守り、安定した食料供給を確保するためにも、高温障害への理解と対策は今後ますます重要となるでしょう。