GXとは?脱炭素と何が違う?
GXとは、Green Transformation(グリーントランスフォーメーション)の略称で、2030年の国としての温室効果ガス排出削減目標(46%)の達成や、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを経済成長の機会と捉え、排出削減と産業競争力の向上の実現に向けて、社会システム全体の変革を目指す取り組みです。
参考:経産省|GXリーグ構想
同じような言葉で「脱炭素」がありますが、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにすることで、「カーボンニュートラル」と同義です。
温室効果ガスの「排出量」から、植林や森林管理などによる「吸収量」を差し引いて、実質的にゼロにすることを意味しています。
GXが注目されるようになった背景は?
GX(グリーントランスフォーメーション)が注目されるようになった背景には、いくつかの要因があります。以下は、日本と世界の文脈での主な理由です。
日本におけるGXの背景
(1)地球温暖化対策の加速
日本政府は2020年10月に2050年カーボンニュートラル宣言を行いました。これは、地球温暖化対策を求める世界的な流れに対応するためのものです。
(2)経済成長と環境保護の両立
GXは、温室効果ガス排出量の削減と経済の成長を同時に実現するための取り組みとして注目されています。企業活動において、環境保護を成長機会と捉える動きが加速しています。
世界におけるGXの背景
気候変動への対応
世界各国が気候変動に対処するため、カーボンニュートラルや温室効果ガス削減の目標を設定しています。
ウクライナ戦争によるクリーンエネルギーへの移行
また、ロシアのウクライナ侵略によるエネルギー情勢のひっ迫を受け、G7 を始めとする欧米各国では、各国の実情に応じたエネルギー安定供給対策を講じており、足元のエネルギー分野のインフレーションへの対応として、様々なエネルギー小売価格の高騰対策を講ずるとともに、再生可能エネルギーの更なる導入拡大を行いつつ、原子力発電の新規建設方針を表明するなど、エネルギー安定供給確保に向けた動きを強めています。
GXが大きく動き出した契機として、2015年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において採択された、パリ協定が挙げられます。これは産業革命以来、進行し続けている地球温暖化を世界共通の脅威と見なし、加盟国196カ国が温室効果ガスの削減について合意を得たものです。
パリ協定は地球の平均気温上昇を産業革命前と比べて2度未満に抑え、1.5度未満の上昇に努めることを目指したものです。
パリ協定がGXに与える影響としては、下記の通りです。
- カーボンニュートラルの目標設定
パリ協定は、多くの国々にカーボンニュートラルや温室効果ガス排出削減の目標を設定するきっかけを提供しました。 - 政策と規制の変化
各国政府は、パリ協定の目標達成に向けて、環境関連の法律や規制を強化しています。これにより、企業はビジネスモデルの変革を迫られ、GXへの取り組みが加速しています。 - 投資とイノベーションの促進
パリ協定により、再生可能エネルギーや持続可能な技術への投資が増加し、関連するイノベーションが促進されています。
GXを推進する日本政府の動き
日本政府は、GXを通じて次の3点の実現を目指しています。
- 2030年までに温室効果ガス排出量を2013年比で46%削減し、2050年カーボンニュートラルの国際公約を達成すること
- 安定的で安価なエネルギー供給につながるエネルギー需給構造の転換
- 新たな市場・需要を創出し、日本の産業競争力を強化することを通じて、経済を再び成長軌道に乗せ、将来の経済成長や雇用・所得の拡大につなげること
経済産業省がGX実行会議で取りまとめ、2023年2月に閣議決定した「GX実現に向けた基本方針」では、GXを加速させることで、エネルギー安定供給と脱炭素分野で新たな需要・市場を創出し、日本経済の産業競争力強化・経済成長につなげていく方針を示しています。
この方針の柱は、以下の2つです。
- エネルギー安定供給の確保を大前提としたGXの取組
「安定的で安価なエネルギー供給は、国民生活、社会・経済活動の根幹である」という思想のかたわら、電力自由化の下での事業環境整備、再生可能エネルギー導入のための系統整備、原子力発電所の再稼働などが十分に進まず、国際的なエネルギー市況の変化などとあいまって、エネルギー危機とも言える状況。
気候変動問題への対応を進めるとともに、GX の推進そのものが、エネルギー安定供給の確保につながるとして、以下に取り組む
- 化石エネルギーへの過度な依存からの脱却
- 再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源の最大限の活用
- 需要サイドにおける徹底した省エネルギー、製造業の燃料転換などの展開
- 「成長志向型カーボンプライシング構想」などの実現・実行
国際公約達成と、産業競争力強化・経済成長の同時実現に向けて、今後 10 年間で 150 兆円を超える投資が必要との試算がでています。
こうした巨額の GX 投資を官民協調で実現するため掲げられたのが、「成長志向型カーボンプライシング構想」で、具体的には、以下の3つの措置をとります。
- 「GX 経済移行債」等を活用した大胆な先行投資支援(規制・支援一体型投資促進策等)
- カーボンプライシングによる GX 投資先行インセンティブ
- 新たな金融手法の活用
ビジネスとGX
政府によるGX(Green Transformation)の推進は、多くのビジネスチャンスを生み出しています。以下にいくつかの主要な分野を挙げ、それぞれのビジネス機会について概説します。
1. 再生可能エネルギー
日本のエネルギー政策は、再生可能エネルギー源への移行に重点を置いています。太陽光発電、風力発電、バイオマスなどの分野での新規事業開発や技術革新が期待されます。また、これらのエネルギー源のインフラ整備や運用管理に関連するビジネスも拡大するでしょう。
2. 省エネルギー技術
省エネルギー製品やサービスの需要が増加することが予想されます。建築物のエネルギー効率を改善する技術、高効率の家電製品、省エネルギー型の輸送手段などが注目されます。
3. 炭素排出権取引
炭素排出権取引市場の拡大に伴い、排出権の取引や管理、コンサルティングサービスに関連するビジネスが成長する可能性があります。
4. クリーンテクノロジーの開発
環境に優しい技術、例えばカーボンキャプチャー、利用、貯蔵(CCUS)技術、電池技術、電気自動車などの開発には大きな機会があります。
5. 環境サービス
環境アセスメント、持続可能性報告、グリーンコンサルティングなど、ビジネスやプロジェクトが環境基準に適合していることを保証するサービスが需要を増やすでしょう。
6. グリーンファイナンス
環境に優しいプロジェクトへの投資を促進するための金融商品やサービス、例えばグリーンボンドやサステナブルローンなどが注目されます。
これらのビジネスチャンスは、GX政策の目標に合致する持続可能な経済の構築に貢献するだけでなく、新たな市場や雇用機会を創出する可能性があります。また、これらの分野でのイノベーションは、日本の国際競争力を高める重要な要素となるでしょう。
まとめ
以上、GXについての言葉の定義から、直近の国内での動きについてご紹介しました。
さまざまな要素が重なり合い、本格化している産業変革の動き。
農業界でもさまざまな取り組みがなされています。
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