農業用ドローンとは?
ドローンとは、航空法第2条22項の改正により「無人であり、遠隔操作または自動操縦で飛行できる、200g以上の重量の機体」と定義されています。簡単にいうと「無人の航空機」のことを意味します。
ラジコンヘリとの違いとしては、どちらも遠隔操作で飛行させる点は共通しますが、自動飛行機能の有無が挙げられます。
正確には、すべてのドローンが自律飛行可能というわけではないものの、ごく一般的な機能となっています。
そのドローンを農業に応用したものが、「農業用ドローン」です。一般的なドローンは、空撮や人が立ち入れないような現場の状況確認などに利用されていますが、農業用ドローンでは主に農薬や肥料の散布、圃場(ほ場)のモニタリングに利用されています。
農業界は慢性的な人材不足を問題として抱えており、自律駆動型のドローンを活用することで、農作業時間の短縮・労力の軽減が期待されています。
農業用ドローンのメリット
農業用ドローンを導入することで、どのような効果が期待できるのでしょうか?具体的にみていきます。
播種から農薬・薬剤散布まで!自律飛行で農作業を効率化
まず、農業用ドローンを利用する最大のメリット・効果として、播種、農薬・肥料の散布作業の効率化が挙げられます。
人力で対応していた農作業について、農業用ドローンを活用することで、上空から広範囲にわたって作業ができます。
散布にかかる時間は、人力で散布する場合の5分の1といわれています。
海外では、広大な農地でヘリコプターを使用した農薬散布・肥料散布が行われていますが、規模が比較的小さな日本の農地にはそぐいません。一方、農業用ドローンは小回りがきく機体のため大規模農場でなくても運用しやすい点は魅力です。
重機を動かしづらい狭い・遠い場所でも持ち運んで作業ができる!
農業用ドローンを利用することで、重機が通ることができない狭い場所・急斜面の場所でも作業が可能となります。
また、圃場が点在することも少なくない日本の農家にとって、重機を移動させることも負担が大きいのですが、農業用ドローンの大きさは、重量が12kg程度、全長約1.2m程度のものが一般的で、持ち運びも容易になります。
特に、重くて機械を使わないと運べないような作業や、ご高齢の方など、機械に頼らないと危険な方にとって、重機が使えない立地というのは死活問題です。
夜間での作業も可能!
自律飛行ができるドローンは、夜間での農薬散布も可能です。
一定、許可が必要となりますが、人がいないうえに病害虫が活性化する夜間に防除作業が実現すれば、防除効果の向上が期待できますし、労働時間の軽減につながると考えられています。また、夜間にカメムシを集めて処理するピンポイント防除と呼ばれる研究開発も進められています。
農作物の状態や作業工程をデータを統合管理できる!
農業用ドローンは、なにかを散布すること以外にも活用できます。その代表例が、圃場の撮影です。
ドローンにカメラをつけて飛行させ、作物の生育状況や病害虫の有無などを確認したり、農薬や肥料散布の履歴データと統合しながら、作物や作業データを統合していくことで、精密な栽培管理の実現を目指します。
人工衛星からの圃場データの活用も検討されていますが、より詳細なデータを取れる点がドローンのメリットです。
農業におけるドローンの使われ方
多くのメリットがあり、期待されている農業用ドローンですが、現在、どのように使われているのでしょうか?
農薬散布
まず農業用ドローンの使用例として、農薬散布への利用が挙げられます。
上空から散布することで、効率性の向上や薬剤による防除の負担軽減が可能です。
メーカーと先進的な経営体が協⼒したセンシングデータに基づく農薬のピンポイント散布が進められており、作業時間の短縮だけでなく、農薬の使⽤量を抑制する効率的な防除の普及も期待されています。
肥料散布
また、近年、肥料散布にも農業用ドローンの活用が期待されています。
従来、積載量やバッテリーに限界があったことで、少量で問題ない農薬に対し、大量に散布が必要な場合のある肥料について実用化が難しかったところ、性能が向上したことで活用が広がっています。
播種・種まき
同じく農作業の軽労化を目的として、ドローンによる播種が検討されています。
上空から種を打ち込み、通常通り発育できないかの研究が進んでいます。
害獣対策
農⽔省の統計では平成30年度で農作物への被害額は156億円と試算されている鳥獣被害。
野生鳥獣の監視や野生鳥獣を追い払うに当たって、ドローンの活用が進んでいます。
監視に関しては、光学カメラに加えて赤外線カメラを掲載したドローンによって、夜型の野生鳥獣の動きをモニタリングし、それぞれの動物に適した対策を講じる起点となります。また野生鳥獣に接近して飛行したり、サーチライトや機械音による威嚇を通して追い払うような実用化もすすんでいます。
農作業のデータ取得・圃場センシング
作物の⽣育状況、⼟壌の肥沃度、病害⾍・雑草等の発⽣状況等をドローンで撮影した画像から分析する様々なセンシングサービスが複数企業によって実⽤化されています。
先進的な経営体では、各作物の栽培に各種センシングデータを有効活⽤した取組が始まっているところも。
農業用ドローンを使用するには資格・許可は必要?
農業用ドローンの使用シチュエーションとして代表的な農薬・肥料散布は、農作業の中でも高度な専門性が必要な作業で、失敗すれば農作物の発育に大きな影響を及ぼすとともに、近隣の圃場へも迷惑がかかってしまうかもしれません。
そのため、安全に農薬散布・肥料散布を行うためにも農業用ドローンの講習会に参加したり、ドローンの民間の資格を取得することが強く推奨されています。
とはいえ、運用にあたって、明確に資格が必須というわけではありません。
併せて読みたい!|【農業用ドローン】免許必要なの?農業用ドローンを導入したい方必見!
農業用ドローンのデメリット・課題
散布可能な農薬の数が少ない
ドローンは積載重量が少なく、薬剤タンクの容量が小さいため、高濃度・少量での散布が可能な”ドローンに適した農薬”数の拡大が求められています。
農林水産省は、使用基準に従って使用すれば安全であると判断できる農薬だけ、農薬取締法に基づき登録を行っています。農薬取締法により、登録されていない農薬は使用できません。
また、登録の際には使用できる「作物名」や「使用時期」、「使用量」、「使用方法」などの「使用基準」を決めており、農薬が登録されていても使用基準以外の方法で使用してはいけません。
参考:https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/nouyaku.html
導入コストが一定かかる
農業用ドローンの費用相場は100~300万円ほどです。 無人ヘリコプターの相場が約1,000万円なので、比較すると安価に手に入れられるものの、導入コストの高さは懸念材料の1つです。
農業用ドローンの代行会社もでてきており、一定の農地面積を下回るようならば、業者に依頼するのも選択肢として考えられるでしょう。
農薬散布時のドリフトが問題となることがある
農薬の使用におけるドリフトとは、散布された農薬が目的外の作物に付着してしまう現象のことです。
一般的にドリフトが発生すると、周辺作物について農薬残留規制の基準値を意図せずにオーバーしてしまう事態や、周辺作物への薬害が発生し、周辺の農家の方に迷惑がかかるほか、近接する住居や道路等に農薬がドリフトした場合、直接かかってしまったり、洗濯物や干した布団に付着するなど、近隣住民や通行人の健康被害が懸念されます。
場合によっては法的な問題に発展する可能性があり、注意が必要です。
さまざまな規制がある
現在、国内でのドローン飛行に対しては航空法の規制を中心にさまざまな規制が存在します。
過去には、農林水産省が定めるガイドラインの中でも、農業にドローンを活用する際は安全対策として、操縦オペレーターとナビゲーターの2人が必要と定められており、ドローン活用による農業の効率化の課題となっていました。(現在は撤廃)
ドローン飛行が一般化していく中で、免許制の導入も検討されており、今後の展開に注目です。
いますぐ実践!農業用ドローン導入コスト軽減の方法
レンタルサービス・委託サービスを利用
そもそも有効に活用できるか懸念がある、最新機種の性能がわからないなど、気になることが多い中で農業用ドローンの導入費用を払うのが憚られる・・・という方は、まずはレンタルサービスや委託サービスを利用してみることがおすすめです。
ただし、レンタルサービスはドローン操縦ができることが前提となるため、実際、まったくの初心者で利用することは難しいでしょう。
その際は、委託サービスなど専門業者に依頼することが考えられます。
2,500円 / 10a で利用できる委託業者もあるため、数回程度、利用してみた上で要否を検討してみてはいかがでしょうか?
補助金・助成金の申請
また、農業用ドローンの導入にあたって、補助金・助成金を申請し、一部費用を補填する方法も考えられます。
2022年度の公募は終了してしまっている補助金もありますが、次年度以降の参考としていくつか紹介しますので参考になさってください。
- 深谷市アグリテック導入支援事業補助金
実施機関:深谷市
補助・助成対象:認定農業者もしくは認定新規就農者で、かつDEEP VALLEY会員であること等
助成内容:栽培データ活用に関する機器・設備等の購入・設置に必要な経費、環境制御に関する機器・設備等の購入・設置に必要な経費、自動運転(遠隔制御含む)・作業軽減に関する機器・設備等の購入・設置に必要な経費
上限金額・助成額:機器・整備費については50万円、使用料・賃貸料・サービス料については20万円
補助率:機器・整備費、使用料・賃貸料・サービス料 ともに 1/2 以内
申請期間:令和4年10月3日以降
公式HP:https://deep-valley.jp/subsidy/subsidy135/
- 【終了】農地利用効率化等支援交付金
実施機関:農林水産省
お問い合わせ先:農林水産省経営局経営政策課担い手総合対策室(03-6744-2148)
補助・助成対象:認定農業者、認定就農者などの人・農地プランに位置付けられた者、地域における継続的な農地利用を図る者として市町村が認める者
助成内容:地域が目指すべき将来の集約かに重点をおいた農地利用の姿の実現に向けて、生産の効率化に取り組む等の場合に必要な農業用機械・施設(事業費50万円以上)
上限金額・助成額:300万円等(先進的農業経営確立支援タイプ:個人1000万円、法人1500万円等)
補助率:融資残額のうち事業費の3/10以内等
申請期間:令和4年4月5日から。申請期限は、国への提出期限(令和4年5月16日月曜日)を踏まえて市町村が設定
公式HP:https://www.maff.go.jp/j/keiei/keikou/kouzou_taisaku/index.html
- 【終了】令和3年度スマート農業の全国展開に向けた導入支援事業のうち農業支援サービス導入タイプ 第4次公募
実施機関:農林水産省
補助・助成対象:農業支援サービス事業者
支援内容:農業支援サービスの提供を目的とした補助対象機械の取得等
上限金額・助成額:1事業者・サービス事業利用者1者当たり300万円(上限1,000万円)
補助率:1/2 等
申請期間:令和4年10月31日まで
公式HP:https://www.maff.go.jp/j/supply/hozyo/nousan/220912_376-1.html
ドローン機種・機能の紹介
農業用ドローンは、近年の期待の高さをうけ、ドローン機種が増えてきています。
そうした中でどのドローンを利用するべきか、迷ってしまうような農業従事者も少なくないことでしょう。
そこで、ドローン機種を選ぶ際に注意するべきポイントと、具体的なドローン機種を紹介します。
ドローン機種の選び方
農業用ドローンを選ぶ上でのポイントは、費用コスト、安全性、散布性能の大きく3つです。
費用コストを抑えるために、海外製の安価なドローンを購入して、じつは農薬散布の際に欠陥が生じれば、甚大な被害が生じかねません。
また、飛行性能が高くても、自身の農地に対してオーバースペックであれば費用対効果が悪くなってしまいます。
上記の3つのバランスをとりながら適切なドローンを選んでください。
具体的には以下を検討するといいでしょう
- 技適マークの有無、国交省HPで紹介されている機械か否か
技適マークとは、「技術基準適合証明等のマーク」の通称で、無線通信技術を利用して操縦するドローンにこれがないと電波法違反となり、処罰の対象となってしまうので注意しましょう。
また、国交省のHPで紹介されているような機種を使用すれば、飛行に講習が必要となってくるものの、許可を取る手続きが一部免除となる場合もあり、検討の材料としてもいいでしょう。
- 最大飛行時間
農薬を散布する場所の面積にもよりますが、農業用ドローンを購入する際は最大飛行時間もチェックしておくことがポイントです。
一般的には20〜30分が飛行可能時間です。
農地の面積をどの程度カバーできるか確認しておきましょう!
- 散布性能・散布速度
散布目的でドローンを導入するのであれば欠かせないポイントです。さまざまな性能を備えたドローンがあるなかで、農薬散布に適した性能があることで、より効率的に作業できます。またそれだけでなく散布の精度も高いものとなるので、作物の品質を向上させるためにも着目すべきです。
より効率的な散布を実現したい場合には、散布速度も重要なポイントです。メーカーによって散布速度も異なるため、散布面積に合わせた最適なものを選んでみてください。
- タンクの容量
タンク容量が大きいほど、1度に搭載できる農薬の量も多くなります。散布面積が広いほど、タンク容量が大きいものを選ぶと良いでしょう。ただし、タンク容量が大きいと飛行時間にも影響が出るケースがあります。そのためタンク容量が多ければ性能が良いわけではありませんので、注意しましょう。
- サイズと離陸重量
離陸重量とは機体そのものの重さではなく、農薬・バッテリー・装置などを最大限搭載した時の重量のことです。ドローンは航空法により、機体の重さの規定があります。そのため最大離陸重量が25kgを超えてくると点検の基準や試験などさまざまな項目が課せられるため、個人での所有ハードルが高くなります。
- 自律飛行機能
より手間をかけずにドローンで農薬散布を行いたい場合は、自動飛行機能の有無も確認してみましょう。
もちろん基本的な操作ができる必要はありますが、より負担なくドローンを扱うには自動飛行機能にも注目してみてください。
深谷市はスマート農業・アグリテックの社会実装に取り組んでいます
スマート農業・アグリテック企業の集積地を目指す深谷市が実施するDEEP VALLEY では、スマート農業技術の実証実験のためのさまざまな機会を提供しております。
例えば、「深谷市アグリテック導入支援事業補助金」を用意し、導入コストの負担を軽減することで、企業様の販促活動ならびに農家の方々のサービス導入を促進。市内におけるスマート農業・アグリテックサービスの浸透しやすい環境を整えております。
(「深谷市アグリテック導入支援事業補助金」については、こちら)
- 新製品開発のために実証実験をしたいが農地がない
- 実証実験にどんな農地が適しているかわからない
- 実証実験だけでなく現場の声を聞いて農家さんとコミュニティを広げたい
といったお悩みを抱えている企業のみなさまにお力添えできますので、ぜひご相談ください。
事例O1
農家目線のフィードバックで
ロボット開発が加速
- 代表取締役
成勢 卓裕さん、野毛 慶弘さん
- DEEP VALLEY Agritech Award 2020
現場導入部門最優秀賞
事例O1
農家目線のフィードバックで
ロボット開発が加速
- 深谷市での取組前
- 自社圃場で自律走行型農業ロボットの実証を行っていたため開発スピードは保てましたが、農家や農業法人の目線のフィードバックを十分に得ることができず、改良点の洗い出しに苦労しました。
- 深谷市での取組後
- 深谷市で自律走行型農業ロボットの実証を開始してからは深谷市にご紹介いただいた農家や農業法人からの多数のフィードバックをいただき、改良点の洗い出しがスムーズになり深谷市での取組前よりもロボット開発が加速しました。
深谷市からは農家や農業法人のみならず、埼玉県の農林振興センターや農業協同組合、資材店など様々な業種の方々をご紹介いただき多方面からの協力を得ることができました。
また、レグミン社主催のロボット見学会実施の際にも、農家や農業法人などへの声掛けにご協力いただけたことにより盛会となりました。