自動走行型ロボット実証の成果を披露
株式会社レグミンは、農業ロボット・IoTデバイス研究開発および農作業受託サービスを主な事業とする農業ベンチャーです。2020年8月から深谷市の農家と共に「自律走行型ロボットによる農薬散布」の実証をスタートさせ、2022年4月の有償サービス提供開始に向けて取り組みを進めています。
レグミンと深谷市、有限会社ファームヤード、JAふかや、埼玉県大里農林振興センターによる「深谷市露地野菜スマート農業実証コンソーシアム」が、農林水産省の令和3年度スマート農業実証プロジェクトに採択され、今回の見学会はその一環として開催されました。
12月1日、2日、深谷市の農家が所有するネギ畑でデモンストレーションが行われ、DEEP VALLEY会員の生産者・企業をはじめ、JA、大学・研究機関、農業機械メーカー、報道関係者など延べ60名以上が参加しました。
レグミン代表取締役の野毛慶弘さんから「深谷市にオフィスを集約して約1年半にわたり農業ロボットの実証を進めてきました。その成果をご覧ください」と挨拶があった後、青空の下、多くの参加者の前で自律走行型ロボットがネギ畑に繰り出しました。
農薬散布を効率化、人手不足解消や農地拡大を目指す
今回は最新バージョンと前バージョンのロボット2機が会場に用意されました。まずはオペレーターによる前バージョン機の手動散布を実演しながら、レグミン代表取締役で開発のリードエンジニアを務める成勢卓裕さんからロボットの特徴が紹介されました。
ロボットは畝をまたぐ形状でゆっくりと畝間を走行。事前にGPSの座標で入る畝の位置設定をして、畝に入ったことを認識するとブームを広げ、畝を追随しながら自動走行で農薬を散布します。最大7畝をカバーして1反あたり20~25分の速度で散布することができるとのこと。畑の条件により自律走行が困難なときに切り替えができるように手動走行モードが搭載されています。
ロボットの動作は静かでスムーズ。ラジコン動噴機と比べて静音であることも、周囲に住宅の多い深谷の生産者に評価されているポイントです。開発で苦労した点は、安価な部品で高精度な制御を実現したこと。操作にはゲーム機のコントローラーを使用しています。
農家と共に作り上げるアグリテックの形
最新バージョン機によるデモンストレーションでは、ロボットの動作を熱心に見守っていた参加者から、次々と技術や機能について質問が寄せられ、アグリテックへの関心の高さが窺われました。自動散布や走行の制御、安全性能に関する成勢さんの歯切れのよい回答に、参加者は大きくうなづきながら耳を傾けていました。
安全性の制御については、衝突や人との接触回避に画像処理のほか、トラックの上にカメラを取り付けて遠隔監視も検討しており、映像記録を受託作業でのエビデンスにも活用する仕組みも含めて検討中とのこと。また、各種データ計測から地点ごとの散布量がわかるログを取るなど、「自律走行型ロボットによる農薬散布サービス」の現場導入に向けて着々と進んでいます。
成勢さんに見学会の感触を尋ねると、「農家の方数名からすぐにでも使いたいという声をいただきました。2022年もどんどん実証して現場導入を進めていきたい」と抱負を語ってくれました。
深谷市では農業課題解決のためにアグリテックを推進しています。農家と一緒に地道に取り組むことで現場への浸透を目指してきたことが、形になりつつあることが今回のイベントで感じられました。