バイオスティミュラント(BS資材)とは?
成分や効果、化学肥料との違い

2022.11.16

バイオスティミュラント(biostimulant / 略称:BS) と聞いて、なにか説明できますか?
まだまだ聞き馴染みのないかもしれませんが、じつはヨーロッパを中心に世界で注目されている新しい農業用資材。
2021年には、農林水産省が策定した「みどりの食料システム戦略」において革新的農業技術として言及され、日本国内でも急速に関心が高まっています!
そんなバイオスティミュラント資材(BS資材)とは、いったいどのようなものなのでしょうか?また、なぜ注目されているのでしょうか?
最新の農業分野のテーマについてご紹介します!

注目の新技術・バイオスティミュラント(BS)とは?

2018年に設立された日本バイオスティミュラント協議会のホームページによると、バイオスティミュラントとは、「植物や土壌により良い生理状態をもたらす様々な物質や微生物」であり、「植物やその周辺環境が本来持つ自然な力を活用することにより、植物の健全さ、ストレスへの耐性、収量と品質、収穫後の状態及び貯蔵などについて、植物に良好な影響を与えるもの」とのことです。

また、資材の起源ごとに、以下の分類がなされています。

  1. 腐植質、有機酸資材(腐植酸、フルボ酸)
  2. 海藻および海藻抽出物、多糖類
  3. アミノ酸およびペプチド資材
  4. 微量ミネラル、ビタミン
  5. 微生物資材(トリコデルマ菌、菌根菌、酵母、枯草菌、根粒菌など)
  6. その他(動植物由来機能性成分、微生物代謝物、微生物活性化資材など)

具体的にはどのような効果が期待でき、また従来の化学肥料などの農業用資材となにが違うのでしょうか?

バイオスティミュラントの特徴・効果

バイオスティミュラントの特徴を、人の健康状態で例えると、農薬が病原菌やウイルスなど病原体に直接働きかける西洋医学に近いのに対し、バイオスティミュラントは体のバランスを整えることで病原体を排除しようとする漢方のようなもの。
気候や土壌のコンディション不良に代表される非生物ストレスによる発育阻害を軽減し、植物が本来備えている育つ力を引き出すことがバイオスティミュラントの効果です。
作物はもともと、種の時点で、収穫時の最大収穫量ポテンシャルが遺伝的に決まっています。
ところが、発芽から収穫までの間に、病気や害虫(生物的ストレス)、高温や低温・物理的な被害(非生物的ストレス)に晒されることで、本来のポテンシャルが削がれていき収量ギャップが生じます。このうち、非生物的なストレスを軽減することで、収量ギャップの改善を図るのが特徴です。

具体的な効果としては、以下の9つが挙げられています。

  1. ストレスの耐性
  2. 代謝の向上
  3. 光合成の促進
  4. 開花・着果(ちゃっか)の促進
  5. 蒸散(じょうさん)の調整
  6. 浸透圧(しんとうあつ)の調整
  7. 根圏(こんけん)の環境の改善
  8. 根の量の増加・活性化
  9. ミネラルの可溶化(かようか)

参考:https://lib.ruralnet.or.jp/taikei/ps/tebiki/d31.htm

化学肥料や農薬との違い

従来の農業と比較して、アプローチする課題が異なる点が最大の違いです。
前提として、作物の収穫量を増やしていく上で、作付けした種の (1)収穫ポテンシャルを高める (2)収穫ポテンシャルを削ぐ要素を解消する という2つの方向性があります。
(1)については、収穫量を高める優秀な品種を開発する育種、植物に適切に栄養を供給する肥料の開発・使用、さらには各作物に適切な土づくりや水管理などの栽培方法の改善などが挙げられます。
一方で、(2)については、病気や害虫などの生物的ストレスの軽減を図る農薬の開発やその使用が、従来の取り組みでした。
前述の通り、収量ギャップを生じさせるストレスには、非生物的ストレスもあります。その解消・軽減を目的とするのがバイオスティミュラントの役割なのです。

高まる市場規模

世界のバイオスティミュラントの市場規模は、引き続き拡大が見込まれています。
金額ベースでは2021年から12.4%のCAGR(年平均成長率)で成長し、2028年には59億米ドルに達する見通し。
数量ベースでは、2021年から12.9%のCAGR(年平均成長率)で成長し、2028年には86万4,094.7トンに達すると予想する調査結果もあり、今後も注目の分野です。

バイオスティミュラントに注目が集まる背景

バイオスティミュラントがどのような資材かをご紹介しましたが、なぜいま、世界中で注目されているのでしょうか?

食糧需要の増加への危機感

まず、世界的な食料問題への危機感が挙げられます。
日本では少子高齢化に伴う人口減少が社会問題となっていますが、グローバルな視点では人口は増加傾向で推移。
2050年には今より20億人以上多い95億人になるという予測もあります。
純粋に、増加する人口分の食料を賄うための方法が模索されており、収量の拡大に寄与するバイオスティミュラントが注目されています。

気候変動による非生物ストレスの増加

また、昨今の気候変動によって、バイオスティミュラントが軽くする非生物ストレスが増加している点も重要です。
台風・洪水・干ばつなどの異常気象は、気候災害を引き起こします。世界では、2000年からの20年間で、気候変動による災害が82%。気候変動は今、先進国や途上国を問わず、世界中の人々の安全を脅かす問題となっているのです。異常気象が増えている一因として考えられているのが、「地球温暖化」の進行(CO2排出量の増加)です。
2020年以降、地球温暖化対策に向けた世界共通の目標を達成すべく、途上国を含むすべての参加国に、温室効果ガス排出削減の努力を求めるパリ協定を結びつつ、各国間で気候変動問題の解決にあたっています。

環境負荷の低い栽培への潮流

さらに、有機農法や減農薬への関心が高まることで、バイオスティミュラントへ期待が寄せられています。
ヨーロッパにおいて安心安全な食への関心が高まったことで、EUは2020年5月に「欧州グリーンディール」として2030年までの10年間に「農薬の50%削減」、「化学肥料の20%削減」と「有機栽培面積の25%への拡大」などを明記しています。
とはいえ、グリーンディールを推し進めていくと、作物への栄養供給や農薬による生物的ストレスの除去に懸念が生じるのもまた事実。そこで、バイオスティミュラントによる非生物的ストレスの軽減等を通して、収量安定化を図っていきたいという状況が生じています。

日本においても、農林水産省が「みどりの食料システム戦略」を策定し、健康な食生活や持続的な生産・消費の活発化やESG投資市場の拡大といった、諸外国での動きへ対応を目指しています。持続可能な食料システムを構築するよう推進しており、バイオスティミュラントは革新的農業技術の1つとして言及されました。
参考:https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/attach/pdf/index-7.pdf

化学肥料の費用高騰

また、世界的な穀物需要の増加やエネルギー価格の上昇に加え、ロシアによるウクライナ侵略等の影響により、化学肥料原料の国際価格が大幅に上昇し、肥料価格が急騰しています。
農林水産省では、肥料価格高騰対策事業として令和4年6月~令和5年5月に購入した肥料(秋肥と来年の春肥として使用する肥料)について、化学肥料低減の取組を行った上で前年度から増加した肥料費の7割を交付するような救済措置を用意したほど。
収量を過度に減らさずに、化学肥料の使用を抑える手段の1つとして、バイオスティミュラントへの注目度が高まっている状況です。

バイオスティミュラントの今後の課題

期待が高まっているバイオスティミュラントですが、普及に向けての課題がある状況です。
いくつか考えられますが、もっとも大きな課題としては2点、①法整備が追いついていないこと ②新技術なため製品の安全性向上と規格化に改善余地があること が挙げられます。

バイオスティミュラントに関わる法整備

日本国内で使用可能な農業資材は、農薬に関する農薬取締法、肥料に関する肥料取締法、土壌改良材に関する地力増進法の3つの法律によって定められています。しかし、現時点でバイオスティミュラントの取り扱いは、農薬取締法・肥料取締法・地力増進法の3法の中間に位置すると考えられ、厳密には適用される法律はありません。
今後、農薬との混同を避けるためにも、またバイオスティミュラント内に制約の厳しい農薬関連成分が混入しないよう、消費者が理解できる表記ルールや生産者が遵守するべきルールの用意が必要です。

製品の効果と安全性を農業従事者・消費者に理解してもらうこと

また、まったくの新製品となるため、いざ使ってもらおうとすると、効果が見込める点とその方法、安全に使用できる点等について、農業従事者の方に信頼してもらう根拠が必要となります。バイオスティミュラントの効果、ならびに安全性を証明するために、さまざまな品質テストによる解析やデータの開示が進むかが、今後の課題となるでしょう。
また、「バイオスティミュラント市場」が拡大するには高品質な商品ラインナップが増えていくことが求められますが、バイオスティミュラントの規格化をはじめ、評価システムや保証、安定した技術、製造工程などの標準化が急がれるでしょう。
消費者に対しては、効果が現れる仕組みについて説明する機会を設け、安心・信頼につながる働きかけが求められます。

バイオスティミュラントの展望

普及に向けて、依然として課題は多いですが、先述の通り、世界におけるバイオスティミュラントの市場規模は拡大傾向にあり、活用事例も年々増えています。 ヨーロッパでは、ヨーロッパバイオスティミュラント協議会(EBIC)が中心となって、専門企業の設立や新製品の開発が進められています。
新肥料法(欧州肥料法)は、2022年から施行され、適切な評価を受けたバイオスティミュラント商品は、EU加盟国の基準を満たした証「CEマーク」をつけて販売・輸出ができるようになりました。
このようにバイオスティミュラントの普及に際して立ちはだかる課題に対して、地道に解消に向けた取り組みがなされています。

海外に比べて認知度や普及面で後塵を拝している日本においても、2018年に肥料や農薬を扱う8社による「日本バイオスティミュラント協議会」が発足し、さまざまな活動を通して機運が高まりつつあります。
「バイオスティミュラント」を含むキーワードの検索数は、過去4年間、継続して増加傾向で推移。まさに黎明期と言えるでしょう。

深谷市はスマート農業・アグリテックの社会実装に取り組んでいます

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事例O1

農家目線のフィードバックで
ロボット開発が加速

株式会社レグミン
株式会社レグミン
代表取締役

成勢 卓裕さん、野毛 慶弘さん

DEEP VALLEY Agritech Award 2020
現場導入部門最優秀賞

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農家目線のフィードバックで
ロボット開発が加速

深谷市での取組前
自社圃場で自律走行型農業ロボットの実証を行っていたため開発スピードは保てましたが、農家や農業法人の目線のフィードバックを十分に得ることができず、改良点の洗い出しに苦労しました。
深谷市での取組後
深谷市で自律走行型農業ロボットの実証を開始してからは深谷市にご紹介いただいた農家や農業法人からの多数のフィードバックをいただき、改良点の洗い出しがスムーズになり深谷市での取組前よりもロボット開発が加速しました。
深谷市からは農家や農業法人のみならず、埼玉県の農林振興センターや農業協同組合、資材店など様々な業種の方々をご紹介いただき多方面からの協力を得ることができました。
また、レグミン社主催のロボット見学会実施の際にも、農家や農業法人などへの声掛けにご協力いただけたことにより盛会となりました。