農業の現場を考えたハカリを深谷の生産者に知ってもらう
深谷市の生産者もそうであるように、日本全国どこでも収穫期の農家が大変忙しいのは皆さんもご存知のとおりです。適期に収穫した作物を計量・選別してからパック詰めして納品と、猫の手も借りたいほど作業は山積みです。
高齢化や就農人口が減少している昨今では、人手も集まらないかもしれません。このような課題を解決するには最新のアグリテックを上手に使い、状況を改善していくのが必要になります。
そこで今回紹介されたのが、株式会社オーケープランニングが開発・販売する計量器『テーブルコンビ』です。熊本に本社を置くオーケープランニングは、代表取締役の波多江満氏が2014年に設立した野菜の計量器に特化した新進気鋭のメーカー。とは言え、第20回 熊本県工業大賞を受賞し、DEEP VALLEY Agritech Award 2021では協賛企業賞に選ばれるなど製品に対する評価は高く、生産現場においても全国で累計300台以上を売り上げるなど認知度も高まっています。
そのような背景もあり深谷市産業振興部 産業ブランド室では、現場における即戦力アイテムとして今回の体験会を開催しました。
テーブルコンビで組み合わせ計量を体験
参加者の目の前には2種類の『テーブルコンビ』が置かれ、波多江氏が計量をデモンストレーションしました。1台は組み合わせ計量ができるもので、もう1台は重量でランク選別が行えるものです。組み合わせ計量は、いくつかのトレイに載せた野菜に対し、設定した重量に合う組み合わせを表示するもので、パック詰めや結束する際に役立ちます。
使用方法は簡単で、6つのトレイに適当に野菜をのせると設定値に合う組み合わせが表示されるので、それを取って袋詰めや結束などしていきます。例えば2つの組み合わせで設定値に届く場合は、X番目とY番目に「2」と表示されます。3つの組み合わせなら、X番目とY番目とZ番目に「3」と表示されるので、それが合格品になるわけです。
もう一方のランク選別は重さごとに設定したランクが表示されるものです。例えば、「85gならS」、「100gならM」、「誤差はプラス15g」といったように設定すれば、トレイにのせた野菜が85~99gなら「S」、100g以上なら「M」といった表示が出るので、それに従い選別をしていきます。
波多江氏がデモンストレーションを行った後は、参加者が組み合わせ計量を次々に体験していました。途中からは用意されていた模型ではなく、持ち込んだ実物のパクチーやネギを使った計量や、OKが出た組み合わせを再度別のトレイにのせて表示を確認するなど、参加者のテーブルコンビに対する興味と期待の高さがうかがえました。
製品に対する質問も次々に飛び出し、使うと数字的にどれくらい効率化されるのか、人員の配置はどれくらいが適切か、修理やメンテナンスのタイミングなど、導入まで考えたものも挙げられていました。
製品の完成度をさらに高めるためには深谷の力を借りたい
波多江氏は「現在のテーブルコンビについても完成品とは思っていません」と話しています。9年前に原型を作り上げた後もトライ&エラーを重ねることで実用度を高め、要望のあった計量方法を新たに組み込むなど常にアップデートを心がけています。その理由は地域ごとにさまざまなルールがあり、その現場の作業に合うよう計量の効率化を図るのが最善だと考えているからです。農業のレベルが高い深谷の生産者の方に使っていただき、得られた知見をもとにさらなる改良を進め、より使い勝手の良い製品を目指しています。今回の参加者にはテーブルコンビが1ヵ月間無料で貸し出されますが、それ以外の製品も開発中であり、どんどん要望を寄せてほしいと話していました。
深谷市産業振興部 産業ブランド推進室では、今後も深谷の生産者が先進的なアグリテックに触れる機会を設け、相互交流の中でより洗練された深谷モデルを誕生させて活性化につなげたいとしています。