身近にあるロボット開発会社と農家を繋ぐ
ロボットの視察会は株式会社アトラックラボが所有する大里郡寄居町のテストフィールドで行われました。今回の取り組みにおいては、アトラックラボのほか、株式会社アームレスキュー、株式会社あーと・夢が開発に参画しています。役割としては、設計・開発をアトラックラボが担当し、アームレスキューは販売代理業務、あーと・夢が製造を担います。
荒川沿いのテストフィールドには、草刈りロボット、運搬ロボット、防除ロボット、自律走行ロボットなどがズラリと並べられ、到着した参加者の視線を早速集めていました。
視察会を開催するに当たっては、産業振興部 産業ブランド推進室の福島敬さんが農業の大きな課題である高齢化・人手不足問題を解決する一つの手段として深谷市もロボットの活用に取り組んでいる事を説明し、「本日は色々なロボットを見ていただき、農業現場におけるニーズや改良点を開発者の方々に直接お伝えできる場にしたいと思っています」と挨拶しました。
また、2年前まで深谷市の消防職員だったアームレスキューの代表取締役 田中章さんは、本職だった経験を生かして開発している消防ロボットのほか、アトラックラボ、あーと・夢と協力して「農業関連にもこれからどんどん力を入れて行きます」と話しました。
農業でも活用できる草刈りロボットや運搬型ロボット
開発中のプロトタイプが多い中、最初に登場した草刈りロボットは発売が決まっていることもあり、完成形に近い形で披露されました。比較的コンパクトなシャーシにエンジンタイプの草刈り機を搭載したもので、プロポを使ってラジコンと同じように操作します。 テストフィールドは川沿いの原っぱなので、夏真っ盛りの現在は背丈の高い雑草も生い茂っています。その中をロボットが軽快に走ると、あれよあれよと草が見事に刈られていき、参加者も興味深く見学していました。
操作を体験した人は「面白い!」と声を上げ、アトラックラボの代表取締役である伊豆智幸さんは「重い草刈り機を持つ必要もなく、ゲーム感覚で楽しめる点もポイントです」と特長を述べていました。
このほか、大型のドローンや消防ロボットなども紹介されましたが、農業現場において役立ちそうなのが汎用性の高い運搬型ロボットです。取り回しのよい二輪駆動タイプと悪路に強い四輪駆動タイプが用意されており、路面の状態にもよりますが、どちらも100kgほどまで運べる能力を有しています。丸太の積み重なった悪路や土手の斜面など、登坂能力の高さなどもデモンストレーションしました。
「導入しやすい価格でロボットを提供したい」
多種多様なロボットを開発しているアトラックラボですが、根底にあるのは導入しやすい価格で製品を提供したいという思いがあります。そのためパーツは既製品を使い、開発リソースを制御系に注力する事でコストを抑えています。この事についても伊豆さんは、「ロボットの性能は日進月歩で向上しているので、長く使うよりも消耗品として捉えた方がよいと思います」と、誰もが手にできる価格である事が重要だと説明しました。加えてロボットには得手不得手があるので、特長を把握した上で圃場の改良や作業体系を変更するのも重要なポイントであると伝えていました。
デモンストレーションの合間には生産者から「駆動輪の大小の違いは?」「防水や防塵加工は施されているのか?」といった質問が次々に飛び出すなど、参加者の興味が尽きることはありませんでした。
アームレスキューはDEEP VALLEY会員として、深谷市の生産者が抱える悩みをロボットで解決できるように窓口として活動していくそうです。ロボット技術は確立されているものが多いので、アイデア次第で作業の負担軽減や新たな労働力として大きな期待が持てます。